IBC 2026:誰も難しい話題を語りたがらない
IBC 2026 で見落とされた課題と、インフラ、AI のコスト、業界再編がライブメディアの未来を形作る理由を考えます。

IBC 最終日、フランスの優れた映像市場アナリストである Ludovic Bostral から、二つの質問が届きました。どちらも的確な問いです。ベンダーとしての売り文句を脇に置き、本音を語らなければ答えられない問いでした。私の回答を紹介します。
最初の質問:展示会場で見えた、IBC Daily が伝えなかったことは?
「今年の公式な話題は、レイテンシの 3 分の 1 への短縮、あらゆる場所への AI 導入、収益化を待つアーカイブの三つでした。過剰に取り上げられたものは何でしょうか。その代わりに、何を議論すべきだったのでしょうか?」
過剰に取り上げられた話題その 1:「あらゆる場所に AI」
会場を歩いて数えてみると、私が目にした AI の約 90% は、字幕生成、リフレーミング、メタデータ生成、合成の司会者や俳優でした。見事なデモであり、実際に役立つ技術です。しかし、業界を根本から変えるものではありません。
実際のライブイベントで通用するものは、ごくわずかです。大きな金額が動く重要な判断を今も人間が担うワールドカップの試合に持ち込めば、その多くは静かに出番を失います。
過剰に取り上げられた話題その 2:「レイテンシを 3 分の 1 に」
確かに、撮影から視聴までの glass-to-glass の数値は本物です。ただし、それは展示会のデモ環境での話です。
本番環境では、別の問題がその改善効果を打ち消します。広告挿入、コンテンツ保護、ラストマイル、そして、画面にゴールが映るより先にスマートフォンへゴール通知が届く、あの同期の問題です。2026 年には、エンドツーエンドで 1 秒未満の配信を実現できます。しかし、プレミアムなライブ配信の規模で、その費用を負担している事業者はまだいません。ストリーミングが放送のレイテンシ(glass-to-glass で約 5~6 秒)を下回れることは、すでに実証されています。大半のライブコンテンツには、それで十分なのでしょうか。
見落とされたもの:配信を支える基盤
大規模なライブイベントが持ちこたえるか、破綻するかを決めるのは基盤です。この点を十分な声量で語る人はいませんでした。同時接続数の急増、試合開始時のトークン要求の殺到、認証、フェイルオーバー、キャッシュヒット率、オリジンの負荷軽減。リアルタイムの可観測性も欠かせません。ここでいうリアルタイムとは、本当のリアルタイムです。視聴者がすでに SNS で配信停止を訴えているのに、3 分や 5 分前の状況を表示するダッシュボードではありません。
2026 年にこの業界が交わすべきだった議論は、FIFA ワールドカップから心に残った一文に集約されます。104 試合。50 億人の視聴者。失敗の余地はゼロ。
二つ目の質問:2027 年 9 月の同じ会場で、何が時代遅れに聞こえ、何が主役になる?
最も早く色あせる言葉:「AI 搭載」
売り文句としての寿命は、すでに尽きかけています。2027 年には、かつてのクラウドと同じように、AI の利用は前提になるでしょう。もはや誰も「クラウド」自体を売りにはしません。それを使って何を実現するかを売ります。「AI 搭載」も、同じように役目を終えようとしています。
会場の主役になる話題:実は二つあり、互いにつながっている
メディア業界では大規模な統合が進んでいる
プラットフォームは巨大複合企業へと集約されつつあります。2026 年を通して大きなニュースになった Fubo + Disney、WBD + Paramount などの大型合併だけではありません。従来の放送局が配信契約を結び、そのコンテンツが広く普及した同じ大手プラットフォームへ流れ込む動きもあります。IBC では、TF1 の Netflix での配信や、France Télévisions と Prime Video の連携が、フランスのストリーミング市場を持続的にどう変えているかを議論しました。ベンダーにとってもコンテンツ所有者にとっても、結論は明快です。実質的に差別化できる機会は急速に減っています。買い手は減り、一件ごとの賭けは大きくなり、どの案件でも失敗の余地が狭まっています。
そして、トークン消費をどう制御するか?
2027 年には、内製か外部調達かの判断がさらに難しくなります。誰もが AI で製品を作り、縮小する市場で差別化を図るようになるためです。しかし、AI 主導の開発は後戻りしにくい選択です。技術的負債が生まれ、AI が書いたコードベースを保守するだけでも、必要なトークンが増え続けます。人員削減を免れた最後のシニアエンジニアたちに、生成された 100,000 行のコードを渡し、一晩でデバッグするよう頼むことはできません。
この二つを合わせると、2027 年の本当の問いが見えてきます。獲得できる顧客が減り、トークンの請求額が増える中で、何を自分たちで作り、何を他社に任せて大規模に運用してもらうのでしょうか。
来年アムステルダムの IBC で、私はこの議論をしたいと考えています。基盤は、技術スタックの中で最も華やかな部分ではありません。しかし、試合終了の笛が鳴るときまで立っていられるかどうかを決める部分です。
次の大規模ライブイベントに向けて準備していますか? Momento が大規模なリアルタイムメディアを支える基盤をどう運用しているかをご覧ください。